ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー(本社:兵庫県神戸市、カンパニープレジデント: 中島 昭広、以下「ネスレ ヘルスサイエンス」)は、2022年7月21日より12月21日まで、経腸栄養法による栄養療法を行う患者の便秘に対し、多種類の食物繊維を豊富に含有する流動食(以下、食物繊維高配合流動食)の使用実態調査を実施しました。
調査の結果、便秘患者に対する食物繊維高配合流動食の有用性や排便ケア負担の軽減が示唆され、中間結果が2023年5月神戸市で開催された『第38回日本臨床栄養代謝学会学術集会(JSPEN)※1』にて、最終結果が2023年7月仙台市で開催された『第32回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会(JWOCM)※2』にて、横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授 中島淳氏より、それぞれ発表されました。
ネスレ ヘルスサイエンスは、2025年以降の高齢化率の更なる高まりに伴う医療ニーズの増加、看護・介護労働力の不足や看護業務負担の増加等の社会課題や現場課題を見据え、解決に資する栄養ソリューションの提案に向けた調査や製品開発を行ってまいりました。その取り組みの一環であるこの度の本調査の成果を活かし、看護・介護における重要な課題の一つである排泄介助に対して、課題解決に繋がる製品開発や情報提供に注力してまいります。
調査名:看護・介護現場での労働環境に関する実態調査
調査期間:2019年11月
調査手法:インターネット調査
調査数と対象:3,000人(濃厚流動食、栄養補助食品を提供している医療機関・介護施設に勤務している看護師・准看護師・介護士)
左:問「以下にあげる看護・介護業務のうち、「人手不足」を感じる業務はありますか(複数選択)」
右:問「以下にあげる排泄介助業務の中で負担になっている業務をすべてお選びください(複数選択)」
※1 「JSPEN」日本臨床栄養代謝学会(Japanese Society for Clinical Nutrition and Metabolism):静脈経腸経口栄養を中心とする栄養療法及びそれらを支える基礎的栄養学全般に関する会員相互及び内外の関連学術団体との研究連絡、知識の交換、提携の場となることを通して、代謝及び栄養学の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と医学及び医療の向上に資することで国民の健康と福祉に寄与することを目的としています。
※2 「JWOCM」日本創傷・オストミー・失禁管理学会(Japanese Society of Wound, Ostomy, and Continence Management):創傷、ストーマ、失禁などの管理に関する専門領域の教育、研究、実践および医療の連携をはかり、専門知識の向上、普及に貢献し、もって社会に貢献することを目的としています。
食物繊維と便秘について
食物繊維摂取量の不足は、便秘の原因の一つとされています。食物繊維の「量」と「種類」は、便秘患者の栄養管理において重要な要素になります。食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類があり、それぞれが異なる働きを持っています。グアーガム分解物(PHGG)などの「水溶性食物繊維」は便に水分を保持する事で糞便の硬さを正常にし、オーツ麦食物繊維などの「不溶性食物繊維」は水分を吸収してふくらみ、腸を刺激して蠕動運動を活発にして便通を促進することが知られています。また、「水溶性食物繊維」やフラクトオリゴ糖などのプレバイオティクスは、腸内細菌による発酵で短鎖脂肪酸を産生します。短鎖脂肪酸のうち酪酸は、腸管運動を促進することが報告されています。
経腸栄養と便秘の関係について
栄養療法には投与経路によって「静脈栄養」と「経腸栄養」があり、「経腸栄養」は経口的に栄養を摂取する「経口栄養」と、経口栄養のみで十分な栄養量の投与が困難な場合に用いられる「経管栄養」があります。近年は腸管が機能している場合には「経腸栄養」を優先すること(When the gut works, use it !)が大原則とされています。
「便秘」とは、慢性便秘症診療ガイドライン2017(日本消化器病学会関連研究会/ 慢性便秘の診断・治療研究会)によると、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排泄できない状態」、便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症(日本消化管学会)によると「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」とされています。便秘は高齢者において頻発する問題であり、特に経腸栄養を行っている患者において頻繁にみられる合併症の一つです。便秘は患者のQOLや生命予後を悪化させるだけでなく、便秘治療のための下剤使用によって下痢や皮膚トラブルの原因にもなり、さらにオムツ交換など医療・介護従事者の排便ケア業務負担の増加にも繋がります。便秘には、食物繊維の摂取不足を原因の一つとするタイプも存在し、欧州臨床栄養代謝学会のガイドラインでは、経腸栄養において、食物繊維を含む製品を使用することが推奨されています。
食物繊維高配合流動食の使用経験に基づく
医療従事者を対象とした市販後アンケート調査結果
医師及び看護師を対象とした便秘患者に対する食物繊維高配合流動食の使用経験に関するWEB回答方式のアンケート調査を実施した結果、医師26名、看護師158名より回答が得られ、長期間の便秘を有する患者(半年以上の病悩期間が91.8%)に対する食物繊維高配合流動食の使用実態が明らかになりました。なお、本調査時点での食物繊維高配合流動食の平均使用期間は41.6日間でした。
1. 食物繊維摂取量が増え、硬便が減少して正常便が増加した
経腸栄養を行っている患者において、食物繊維の不足は便秘のリスク因子とされています。本調査の結果から、食物繊維高配合流動食を使用する前は食物繊維摂取量が「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で定める摂取目標量(65歳以上の男性20g以上、女性17g以上)を下回っていましたが、食物繊維高配合流動食を使用した後では一日当たりの食物繊維摂取著しく増えて平均値で摂取目標量を満たしました。また、便性状が改善し、硬便回数の減少と正常便回数の増加が明らかになりました。
2. 便秘治療内容が変化した
便秘に対しては下剤や近年登場した薬剤、浣腸や摘便などによる治療が行われます。その中でも刺激性下剤は慢性便秘症に対してできるだけ頓用または短期間で投与することが慢性便秘症診療ガイドライン及び便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症でも推奨されています。本調査の結果、食物繊維高配合流動食を使用する前に比べ、使用した後ではジフェニール系刺激性下剤の使用が顕著に減少していました。その他浸透圧下剤や浣腸の使用も減少していました。
3. 排便に関する看護業務の負担が軽減した
便秘患者は下剤の使用によって下痢を生じることがしばしばあります。特に流動食による経腸栄養を行っている寝たきりの便秘患者の場合、下剤使用による下痢はオムツ交換やシーツ交換などの看護業務の増加の原因となることがあります。本調査の結果、特に食物繊維高配合流動食の使用に合わせて下剤の調整を行った患者で、より下痢によるオムツ交換やシーツ交換の回数が減少したケースが認められ、排便ケア業務の負担感が減少していました。
‐調査概要‐
調査名:食物繊維高配合流動食の使用経験に基づく、医療従事者を対象とした市販後アンケート調査
調査対象:食物繊維高配合流動食の使用経験がある医療従事者(医師・看護師)のうち、アンケート調査への協力に同意した医師26名、看護師158名
調査期間:2022年7月21日~12月21日
WEBアンケート
※選択バイアスを回避するため、回答した医療従事者が当該製品を最初に使用した患者を評価対象とした。
調査項目:使用患者の背景、使用実績、使用患者の栄養状態の変化、使用患者の便性状の変化、使用患者の便秘関連症状の変化、使用患者の便秘治療の変化、使用患者に対する看護師の排便ケア負担の変化
■横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授 中島淳氏
横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵(かんたんすい)消化器病学教室主任教授。ハーバード大客員准教授を経て、2014年から現職。消化器や便秘改善の専門家として、メディアにも多数登場。
■ネスレ ヘルスサイエンスのパーパスについて
ネスレ ヘルスサイエンスは、“Empowering healthier lives through nutrition(栄養を通じて、人々のより健康的な生活を支援すること)”をパーパスとしています。消費者、医療・介護現場が願う健康的な生活のため、高品質で科学的根拠に基づく栄養ソリューションを顧客に提供しています。
■ネスレ ヘルスサイエンスについて
ネスレ ヘルスサイエンスは、2011年食品飲料業界のリーディングカンパニーである「ネスレ」によって創設された、先進的なヘルスサイエンスカンパニーです。世界140カ国以上で、12,000人以上の社員が在籍し、消費者向け健康製品、医療介護施設向け栄養補助製品、科学的知見を取り入れたビタミンやサプリメントなど、幅広いブランドを展開しています。「高い付加価値」と「グローバルな研究開発力」を強みとし、「栄養の力」を基軸に、総合的に健康をサポートする提案をしています。
企業プレスリリース詳細へ
PRTIMESトップへ
Adblock test (Why?)
ネスレ ヘルスサイエンスが、『第38回日本臨床栄養代謝学会学術集会』及び『第32回日本創傷・オストミー・失禁管理 ... - RBB TODAY
Read More