食事で食物繊維を十分に摂っていると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが低下することが、大規模なコホート研究で明らかになった。 とくに穀類の食物繊維が心血管疾患のリスクを低下させる効果は、野菜や果物よりも強いことも分かった。食物繊維を摂ることで、体内の炎症が抑えられると考えられている。 食物繊維はサプリメントから摂っても、ある程度は効果があることも示された。 食事による食物繊維の摂取量の少ない人が、食物繊維のサプリメントを利用することで、腸内環境を改善する酪酸が増加することが分かった。
食物繊維が多いほど心血管疾患のリスクは低下
全粒粉のパンや玄米などの全粒穀物を十分に食べていると、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが大きく低下するという研究が発表された。 「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白などの処理で、果皮、種皮、胚、胚乳といった部位を取り除いていない穀物のこと。 食事で全粒穀物を多く摂ると、精製された穀物の多い食事よりも、糖尿病や肥満、心臓病などのリスクを低く抑えられることが、多くの研究で示されている。 身近にある全粒穀物として、玄米、玄米を発芽させた発芽玄米、雑穀米、大麦などの入った麦ごはん、分つき米、ライ麦やオーツ麦など全粒粉の小麦を使ったパンやパスタ、オートミールなどの食品がある。 全粒穀物には食物繊維が豊富に含まれる。食物繊維は消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する成分。腸内で糖質の吸収を遅くし、血糖値の急上昇を抑えたり、コレステロールや中性脂肪の吸収も妨げ、動脈硬化の予防にもつながるとみられている。 「一般的に、食物繊維の摂取量の多い人ほど、心血管疾患のリスクは低くなります。食物繊維の摂取量が多いほど、体内の炎症が減少し、心血管疾患のリスクが低下すると考えられています」と、米コロンビア大学公衆衛生大学院疫学部のルパク シヴァコティ氏は言う。 食物繊維の多い食事は、よく噛むために満腹感が得られやすくなり、食べ過ぎを防いで肥満予防につながる。さらに、腸の働きをよくするなど、多くの健康効果がある。 関連情報心血管疾患のリスク低下と関連しているのは穀物の食物繊維
「心血管健康研究(CHS)」は、米国で1980年代に開始された、65歳以上の成人の冠状動脈性心疾患や脳卒中などの心血管疾患の危険因子を調べるために実施されている大規模コホート研究。 研究グループは、1989年~1990年にCHSに参加し、食事アンケートに回答した4,125人を対象に、2015年まで追跡して調査した。 その結果、食物繊維の摂取量が1日に5g増えるごとに、体内の炎症反応などが分かるC反応性タンパク質(CRP)や、インターロイキン-1受容体拮抗物質の値などが低下した。 一方で、こうした心血管疾患のリスク低下と関連しているのは、とくに穀物の食物繊維で、野菜や果物の食物繊維よりも、その効果が高いことも示された。 「食物繊維は一般的に、腸の機能を改善し、食事と満腹感を改善する働きがあります。食物繊維を十分に摂ることで、総エネルギー摂取量と脂肪が減少しやすいことが分かっています」と、シヴァコティ氏は言う。 「2型糖尿病、過体重や肥満が、心血管疾患の重要な危険因子となるのは、肥満の人の体では、炎症が引き起こされやすくなっているからです。食事で食物繊維を十分に摂り、健康的な体重を維持することが大切です」。 「食物繊維により、脂質と糖の代謝が改善し、抗炎症効果がもたされる可能性があります。でも、なぜ野菜や果物ではなく、穀物の食物繊維の方が効果が高いのかはよく分かっていないので、今後もさらに研究を重ねる必要があります」としている。食物繊維のサプリメントは効果がある?
どの食物繊維サプリが効果が高いかを調査
食物繊維を摂ることが体に良いことを理解していても、それが多く含まれる全粒穀物や野菜を利用するのが難しいという人も多い。 「食物繊維が豊富に含まれる全粒穀物、葉物野菜、豆、大豆、ナッツ類、柑橘類などの果物をよく食べているヒトは、腸内のマイクロバイオームが健康であることが知られています」と、米デューク大学で分子遺伝学や微生物学を研究しているローレンス デイビッド氏は言う。 「しかし、そうした食品は高価であることが多く、地域によって入手しにくい場合もあり、食事の準備にも手間がかかります。そうした人は、食物繊維のサプリメントを利用することで、恩恵を受けられないかと考えました」。 「マイクロバイオーム」は、ヒトの体に共生している細菌などの微生物の総体のこと。ヒトの腸内には500~1,000種類、100兆個と推定される細菌が棲んでおり、健康の多くの面で重要な役割を果たしている。 腸内マイクロバイオームにとくに影響を及ぼすのは、食物繊維の多い食事だと考えられている。食物繊維は、ビフィズス菌や乳酸菌などの、腸内に棲む善玉菌のエサになる。 腸内の善玉菌は、腸の病気、大腸がん、肥満などから体を守る短鎖脂肪酸を多く生成する。さらに、短鎖脂肪酸の一種である、酪酸と呼ばれる脂肪酸を生成し、これが大腸のエネルギー源として使われ、腸内の病原体から腸を守り、さらに炎症を抑え、腸内環境を改善していると考えられている。食物繊維の摂取量の少ない人ではサプリは効果がある
「米国の成人は平均的に、食物繊維を1日の推奨量の20~40%しか摂取していません。食物繊維の不足は、2型糖尿病、肥満、心血管疾患、消化器疾患、結腸がんなどのリスクを高めていると考えられます」と、デイビッド氏は言う。 「しかし、完全な菜食主義者になったり、食物繊維が豊富なケールを毎日数キロ食べるなどということは現実的ではありません。そこで、短鎖脂肪酸の生産を増やすことにつながる、便利な食物繊維のサプリメントを利用する方法を考えました」。 研究グループは、28人を対象に、一定の期間、食物繊維の摂取量を最小限に抑えてもらった後で、無作為に3つのグループにランダム化し、1週間の休みを入れて、異なる3種類の食物繊維のサプリメントを1週間摂取してもらった。 実験に使われたのは、水溶性食物繊維であるイヌリン、日本でも特定保健用食品(トクホ)に使われているデキストリン、腸内細菌のエサとなるガラクトオリゴ糖の3種類のサプリメント。 その結果、食物繊維の摂取量がもっとも少なかった参加者は、サプリメントを利用することで、その種類に関係なく、腸内の酪酸が大きく増加したことが分かった。食物繊維の摂取量がもともと多かった人では、あまり変化はなかった。取り組みやすい持続可能な方法が有用
「この結果は心強いものです。もしも、あなたが食物繊維の摂取量が少ないのなら、それを含む食品を食べることが望まれますが、それができないのならサプリメントを利用する方法もあります」と、デイビッド氏は言う。 「食物繊維が体に良いことが知られるようになり、ドラッグストアや食料品店では、多くの種類の食物繊維のサプリメントが売られるようになりました。しかし、消費者はどの商品を選べばよいのか分かりにくくなっています」。 「食物繊維であれば、どのサプリメントを使うかは、あまり気にしなくても良いかもしれません。あなたの取り組みやすい、持続可能で、あなたにとって役立つ方法をみつけることが重要です」としている。Intake and Sources of Dietary Fiber, Inflammation, and Cardiovascular Disease in Older US Adults (JAMA Network Open 2022年3月31日)
It Doesn'T Matter Much Which Fiber You Choose - Just Get More Fiber! (デューク大学 2022年7月29日)
Microbiota responses to different prebiotics are conserved within individuals and associated with habitual fiber intake (Microbiome 2022年7月29日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
食事で食物繊維を摂ると糖尿病合併症リスクが減少 サプリメントは効果がある? | ニュース - 糖尿病ネットワーク
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