東京・田無を中心に大正ロマンの香り漂う和風喫茶「武蔵野茶房」をはじめ、中華料理、イタリアン、洋菓子、古民家の宿の5業態9店舗を展開する武蔵野テーブル。
多店舗展開で増えた経理業務を減らすため、発注システムを導入しました。また、食の安心・安全を提供するため、一部店舗でアレルギー表を常備するほか、自社ECサイトに特定原材料の品目を表示しています。その取り組み方法と効果を伺いました。
32年にわたって愛される店づくり
【Q】カフェや食堂など、様々な業態を展開されています。
1989年に西東京の田無で喫茶「武蔵野茶房」を創業し、現在3店舗を展開しています。その後は本格イタリア料理の「武蔵野食堂」、中国家庭料理「墨花居」2店舗を展開し、洋菓子のスイーツ業態2店舗と古民家の宿1店舗があります。コロナ禍になってからは自社サイトでの通販事業や自社配達のデリバリー事業を始めました。(取締役 高橋正人氏 以下同)
【Q】コロナ禍の影響はいかがですか。
コロナ禍になって始めたデリバリー事業が、既存のお客様から好評です。UberEatsや出前館経由の注文もありますが、地元のお客様がポスティングチラシを見て直接ご注文いただくことが圧倒的に多いですね。土日は多いときで1日20件ほどの注文があります。始めた当初は手探りでしたが、自社で車や自転車を購入し、アルバイトや社員が配達しています。私も手が足りないときは配達に出ます。
お客様からは「コロナ禍でお店に行けないから、デリバリーを頼んだよ」とお声がけいただくこともあり、本当にありがたく思います。創業以来の地域密着型の店づくりが、街の皆様からのご支援につながっているのだと実感しています。
EC事業の強化で、アレルギー情報の管理方法を改善
【Q】特に強化したことはありますか?
自社のECサイト「M・dish」をコロナ禍に入ってすぐ本格スタートしました。もともとチーズケーキや焼き菓子をオンラインで販売していたのですが、2020年春頃、看板商品のチーズケーキに注文が殺到したことがきっかけで、当社の社長が外販事業部として強化しはじめたのです。
また、お客様に安心していただくため、商品のアレルギーや添加物などの食品表示にも気をつけています。お客様のなかには、小麦や乳製品にアレルギーのある方もいらっしゃいます。調味料の酢や醤油に、大豆だけではないアレルゲンが含まれていることもあります。
通販サイトの商品ページでは商品ごとの特定原材料7品目を掲載し、商品パッケージにも食品表示ラベルとしてアレルギーや添加物の情報を表示しています。
店舗でも、時代のせいか、アレルギーについてお問い合わせをされるお客様は増えています。このため、スイーツ業態の「武蔵野菓子工房」では、シェフが新商品を開発する際、仕入れ品のアレルギーや添加物を確認しています。レストラン業態でも、お問い合わせのたびに、ホールスタッフがキッチンへ確認しに行く手間がかかりますので、グランドメニューについてはアレルギー表を作って備えておくことにしました。
飲食を提供する者として、細かく確認できた方がもちろんいいですし、お客様との信頼関係の基本である食の安心・安全、情報提供には今後もこだわっていきたいです。
【Q】通販商品や店舗メニューのアレルギー情報は、どのように管理されていますか?
仕入れ先さんから商品のアレルギーや添加物が記載された商品規格書を送っていただき、成分の確認作業は、現場と本部の二重チェックをしています。規格書の収集や管理は、管理システム『BtoBプラットフォーム 規格書』を使って改善するようになりました。
これまでは仕入れ先に電話やFAXで確認したり、ネットで調べたりという作業に多くの時間を取られていたのです。回答は翌日以降になることも多いですし、自分たちでも仕入れ品に食品表示ラベルがあれば確認するなどして、あちこちでチェックしなければならないので、ひとつの確認に数日かかることも多かったのです。
それがシステムを導入してからは、その場で確認できるようになりました。内容にもよりますが、作業時間はざっくり30分から5分ほどに短縮できていると思います。
発注作業のシステム化で経理担当が1人分削減
【Q】発注作業でもITツールを使用されています。
人手不足の問題が以前からあり、ITツールで改善できたらと思って2020年に『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入しました。
それまで仕入れ品の発注はFAX送信や電話で、月初に各店舗から本部へ前月の仕入れ伝票をすべて送り、事務所の棚はいつも伝票で溢れかえっていました。2名の経理担当が1枚ずつ確認し、エクセルの表に入力していたので、負担が大きかったのです。
また、紙を紛失してしまったり、仕入れ先から伝票が届いていなかったり、現場で仕入れ数量を変更したのに伝票には反映されてなかったり。それらをチェックしないまま本社に送ってしまい、「これはほんとうに発注したの?」というムダなやり取りも多かったです。
受発注システムの導入で、こうしたトラブルはなくなりました。仕入れデータを会計ソフトの弥生会計に読み込ませることで、経理業務が2人から1人で回せるようになり助かっています。時間にして、1日8時間×15日で120時間は最低でも浮いているでしょう。
また、仕入れ金額がすぐに分かるので、月次決算が月初に出せるようになりました。アナログの経理処理をしていた頃は、請求書を取り寄せたり合っているかを確認したりして、月の半ばや後半にならないと収支が確定しなかったのですが、システムの導入で2週間は早まりました。
【Q】店舗間の商品のやりとりにも、受発注システムを使用されていますね。
スイーツ業態の「武蔵野菓子工房」でケーキや焼き菓子を作って、他の店舗に納入して販売しています。これも以前は電話やFAX、伝票でやりとりをしていたのでミスがありましたが、システムの導入で楽になりました。社外との取引だけでなく、社内での取引もひとつのシステムでまとめて経理処理できるようになり、余分な業務が大きく減ったと実感しています。
【Q】その他に便利になったことはありますか?
現場でも、仕入れ品ごとの金額や数量を一括計算できる『棚卸機能』も活用したことで、数字の精度が上がりました。これまでは手書きで在庫のカウント漏れや二重カウント、人によって数え方が違っていたことなどがあってアバウトだったのです。人による誤差もなくなり、アナログだった頃とは比べ物にならないくらい数字の精度が向上しました。
仕入れ額がすぐ計算できるので、原価も分かるようになりました。毎週、毎月の金額を店舗ごとに見て、高い店舗には「もうちょっとここを改善できるかもしれない」と、相談して考えることもできます。正確な数字をもとに話ができるのはありがたいですね。
1店舗だけならそこに常駐して指摘もできますが、当社はカフェ、中華、イタリアン、スイーツとさまざまな業態を展開しています。使っている食材もバラバラだし、ひとつひとつ把握するのは大変です。数字の実績が溜まれば傾向も見えますし、大きなメリットだと感じています。
どんなにIT化が進んでも、温かみのある接客は残る
【Q】今後の展望を教えて下さい。
今後はご来店のないお客様と積極的につながっていきたいと考えています。そのために現在、一部店舗でSNSやメルマガなどでの情報発信をしております。ただ、最も大切なのは接客です。どれだけIT化が進んでも、どれだけ自動で料理が作れるようになっても、温かな接客へのニーズは残るからです。
たとえばきちんとお客様を名前でお呼びしたり、お好みに合うメニューを提案したり、左利きのお客様がご来店される際にあらかじめ、セットの位置を左利き用に変えておいたり。1つひとつは細かいことですが、IT化で空いた時間を、こうした細やかなサービスを提供するための工夫の時間に使えたらと思います。
私たちの仕事は料理を介した、人と人との温かい交流を提供することです。お店はあくまでも来ていただくきっかけで、実際はお客様に楽しんでもらうことが目的ですから、素敵な時間を提供するためにも、細やかな接客を大切にしていきたいです。
IT化で食物アレルギーの確認時間を5分に短縮。1人分の経理作業も削減~武蔵野テーブル|フーズチャネル - フーズチャネル
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