コロナ禍の影響で我慢する生活が長引き、メンタル面の不調を訴える人が増えています。厚生労働省も「コロナうつ」の実態把握や対策に乗り出しましたが、自律神経の専門医で順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、「いちばん危ないのは子どもたちのメンタル」と危惧しています。最新刊『本番に強い子になる自律神経の整え方』で、子どもたちの深刻な現状について訴える小林教授に、今、大人は子どもたちのために何をするべきなのか、聞きました。
文/小林弘幸 イラスト/大塚砂織
水溶性と不溶性の違いに注意! 食物繊維をしっかり摂る
腸内細菌にしっかり働いてもらうためには、その餌が必要です。私たちが摂取する食べ物の中で、ほぼ唯一、腸内細菌の餌となるのが食物繊維です。ほとんどの栄養素が小腸で吸収されてしまうのに対し、食物繊維だけは吸収されず、大腸まで届くからです。食物繊維は、栄養学的には「炭水化物」に分類されます。そして、炭水化物は糖質と食物繊維からなります。
たとえば、白米やうどんにはたくさんの炭水化物が含まれますが、そのほとんどが糖質です。一方、野菜にも炭水化物は含まれるものの、その多くが食物繊維です。
さらに食物繊維は大きく分けて、水に溶けやすい「水溶性」と、溶けにくい「不溶性」の2種類があり、それぞれ働きが違います。腸内細菌の餌となりやすいのは、水溶性のほうです。
さらに、水溶性食物繊維は、水を含むとゲル状になり、便の水分を増やしてくれます。それによって柔らかくなった便が、スムーズに排出されます。
一方、不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸って膨らむことで、便の嵩(かさ)を増やしてくれます。便の嵩が増えれば快便につながりますから、日頃から適量の不溶性食物繊維を摂ることが大切です。ただし、便秘のときに不溶性食物繊維を摂りすぎると、かえって腸の働きが悪くなりお腹が張ってしまいますから注意が必要です。
水溶性食物繊維は、ワカメやコンブなど海藻類、オクラ、サトイモ、ナメコ、納豆のようにネバネバした食品に多く含まれます。そばや押し麦、ニンジンなども、水溶性食物繊維が豊富です。
不溶性食物繊維を多く含む食品としては、バナナ、ゴボウ、サツマイモ、豆類、玄米などが挙げられます。
日頃から、不溶性と水溶性、どちらもバランス良く摂るのが理想です。その上で、普段から便の量が少ない子どもには不溶性の食物繊維を、便秘が続くようならば水溶性の食物繊維の割合を増やすといいでしょう。とはいえ、子どもの排便状態について、把握できていないケースもあるでしょう。小学校も高学年になってくれば、親にウンチのことを聞かれること自体、子どもも嫌がるかもしれません。
一つ言えるのは、家族は同じようなものを食べていますから、親が不足している栄養素については、子どもも不足しているはずだということです。お母さんの腸内環境が悪ければ、子どもも悪くなっている可能性は大です。ですから、「自分も子どもも一緒に改善」というつもりで、食物繊維を摂っていきましょう。
腸内環境の改善に、最強の味噌汁を1日1杯
腸内環境を改善するためには、発酵食品と食物繊維が非常に有効ですが、その両方を一度に摂取できるのが味噌汁です。味噌は日本が誇る発酵食品の一つです。しかも、発酵食品として優れているだけでなく、赤味噌には抗酸化作用のあるメラノイジンという成分が豊富に含まれています。一方、白味噌にはストレスを抑える効果があるギャバがたっぷりです。この両方の味噌を使い、かつ、食物繊維を多く含む具材を用いれば最強の「腸活フード」ができあがります。
味噌汁は、海外の人からも「ミソスープ」と呼ばれ愛されています。あまりにも日常的なものになってありがたみが薄れているかもしれませんが、もう一度見直して毎日の食卓に取り入れましょう。ただ、忙しいときに、いちいちつくるのはなかなか面倒なものです。そこで、私がすすめているのが、まとめて「味噌玉」をつくり、冷凍しておくという方法です。
味噌は、赤味噌と白味噌を合わせ、両方のいいとこ取りをします。さらに、強力な解毒効果を持つおろしタマネギと、塩分排出効果を有するリンゴ酢を混ぜます。これを1日分ずつ小分けにして冷凍します。製氷皿を用いればより簡単です。毎朝、冷凍庫から味噌玉を取り出し、凍ったまま水と具材と一緒に鍋に入れ、温めればできあがりです。
ダシは、味噌玉をつくる段階で粉末のものを加えてもいいですし、温めるときに入れてもいいでしょう。とにかくラクなほうを選んでください。具材には、水溶性食物繊維をたっぷり含むワカメ、ナメコ、オクラ、サトイモなどを用いれば、腸内環境にとってベストです。さらに、豚汁風に肉を加えたり、豆腐を入れたりすれば、子どもの成長に必要なタンパク質もしっかり摂れます。
この味噌汁を、できれば1日1杯、食べてください。玄米、納豆と合わせたら、朝食としてはパーフェクトです。もちろん、そこまで頑張らなくてもOK。トーストにこの味噌汁でもいいでしょう。朝ご飯がパンだと、なぜか「味噌汁は合わない」と考えがちですが、スープだと捉えれば、洋食にも意外と合うものです。私もよく、この組み合わせで済ませています。
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『本番に強い子になる自律神経の整え方』(小林弘幸 著)
小学館
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任する。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」としても知られ、腸内環境を整える味噌汁や自律神経を整える呼吸法やストレッチを考案するなど、健康な体と心をつくるためのさまざまな方法を提案している。
1日1杯の味噌汁で腸内環境を整える【本番に強い子になる自律神経の整え方】 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト - serai.jp
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