米国Arkansas小児病院のStacie M Jones氏らは、ピーナツアレルギー患者に対する経口免疫療法は、免疫系が成熟する前のより早い時期に実施した方が有効性が高くなるという仮説を検証するため、従来の試験より年少の生後12~48カ月の患者に134週間の経口免疫療法を行うランダム化比較試験(IMPACT)を実施して、経口免疫療法は4歳になる前に開始した方が脱感作と寛解を達成する割合が増えると報告した。結果はLancet誌2022年1月22日号に掲載された。
米国の小児のピーナツアレルギー有病率は約2%といわれている。他の多くの食物アレルギーとは異なり、この疾患は生涯にわたって持続する。発症した患者に対する標準治療は除去食となっているが、意図せぬ摂取によるアナフィラキシーを経験する患者が少なくない。そこで、アレルギー反応が生じる閾値を上げるために、ピーナツを経口摂取させる免疫療法が考案され、臨床試験が行われている。
最初は学童期の小児を対象にした試験が行われていたが、免疫修飾を目的とする経口免疫療法は、免疫系が成熟する前の、より年少の時期に行った方が効果は高いと予想される。生後9~71カ月の小児患者を対象にしたThe DEVIL Trialは、この予想を裏付けるようなデータを報告した。そこで著者らは、さらに年少の生後48カ月になる前の小児患者を対象に、ピーナツアレルギーに対する経口免疫療法を行うIMPACT試験を計画した。
試験は米国のImmune Tolerance Networkに参加している大学病院5施設で行われた。組み入れ対象は、ピーナツアレルギー歴があるか除去食を続けてピーナツを食べたことがない生後12カ月以上48カ月未満の小児で、ピーナツ特異的IgEレベルが5kUA/L以上を示したか、皮膚プリックテストで膨疹の直径が生理食塩水に比べ3mm以上大きかった場合、二重盲検のプラセボ対照食品負荷試験(DBPCFC)で500mg以下のピーナツ蛋白質に対して陽性反応を示した場合とした。ピーナツで低血圧を伴うアナフィラキシーを起こしたことがある患者、コントロール不良の喘息やアトピー性皮膚炎がある患者、好酸球性胃腸疾患がある患者などは除外した。
条件を満たした患者は1対1の割合で、経口免疫療法群とプラセボ群に割り付けた。経口免疫療法群には、脂質が12%になるよう脱脂した、軽くローストしたピーナツ粉を使用し、プラセボ群にはオーツ麦の粉を使用した。
経口免疫療法のプロトコールは4段階で構成し、第1段階ではまず1日0.1mgから6.0mgまで徐々に増量していった。第2段階では治療開始から30週を目安に、1日最大2000mgを目標として2週間ごとに増量を続けた。維持量を増やせるように、少なくとも250mgの増量を3回試みることとした。第3段階は30~134週まで維持量の使用を続け、第4段階として26週間の投与中止期間を設けた(134~160週まで)。
主要評価項目は、割り付け薬の使用開始から134週時点の脱感作とし、DBPCFCで累積用量5000mgを摂取できた患者を脱感作達成と見なした。副次評価項目は、26週間の中止期間を挟んだ160週時点の寛解とし、やはりDBPCFCで累積用量が5000mgになるまで投与し、許容できるかどうかを評価した。さらに安全性と有害事象の評価、免疫学的バイオマーカーの変化なども評価した。バイオマーカーとしては、総IgE、ピーナツ特異的IgEとIgG4、ピーナツアレルギーの主要なアレルゲンとして知られるAra h1、h2、h3、h6に特異的なIgEとIgG4などを測定し、ピーナツ抽出物の刺激あり/無しによる好塩基球の活性化の評価も行った。
食物アレルギーの経口免疫療法は早く始めた方が良い可能性 - 日経メディカル
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