普段から野菜や魚、食物繊維を豊富に摂取している人の腸内では炎症を抑える働きを持つ細菌が豊富である一方で、ファストフード好きの人の腸内では炎症を促進する細菌が豊富である可能性が高いことが、食習慣と腸内細菌叢の関連について検討した研究から明らかになった。フローニンゲン大学(オランダ)のRinse Weersma氏らによるこの研究は、「Gut」に4月2日掲載された。
腸内には、さまざまな細菌などの微生物が群れ集まって生息している。この微生物の群集を腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ぶ。近年、腸内細菌が、代謝や栄養素の合成から免疫防御や脳の機能にいたるまで、人体の正常なプロセスに、重要な働きをしていることが明らかにされつつある。
Weersma氏らの研究は、1,425人のオランダの成人〔炎症性腸疾患患者331人(クローン病患者205人、潰瘍性大腸炎患者126人)、過敏性腸症候群患者223人、健常者871人〕を対象に、173個に及ぶ食事因子と腸内細菌叢との関係を調査した。対象者の食習慣については食物摂取頻度調査で評価し、腸内細菌叢については対象者から提供された便検体を解析した。
その結果、クローン病や潰瘍性大腸炎などの消化器疾患の有無にかかわらず、魚や植物由来の食品の摂取は一貫して抗炎症作用を有する腸内細菌と関連することが明らかになった。すなわち、野菜、果物、脂の多い魚、ナッツ類、食物繊維が豊富に含まれる穀類の摂取量が多い人の腸内では、短鎖脂肪酸を大量に作り出す細菌の濃度が全般的に高いことが判明した。同氏によると、短鎖脂肪酸は、腸内細菌が消化されない食物繊維を発酵させる際に産生される脂肪酸で、抗炎症作用があるという。
その一方で、こうした食事とは正反対のファストフード、すなわち肉やフライドポテト、加糖飲料、加工されたスナック類の摂取量が多い人では、食物繊維が不足しているため、短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌が少なく、炎症を促す腸内細菌が多く生息していることが分かった。
これまで多くの研究で、地中海食や植物由来の食品を主体とした食事が、さまざまな疾患のリスクを低下させることが報告されている。Weersma氏らは、「今回の研究からは、こうした食事が腸内細菌叢に与える影響が、疾患リスクを低下させる要因の一つであることを裏付ける新たなエビデンスを得ることができた」と説明している。
なお、腸内細菌叢を構成する細菌バランスには、遺伝子や年齢、健康状態、薬剤の使用(特に抗菌薬)、ストレスなど、さまざまな要因が影響を与えると考えられている。しかし、今回の研究には関与していない、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のEmeran Mayer氏は、「成人の腸内細菌叢に最も強い影響を与える要因は食事だろう」との見方を示す。日頃より、個々人のニーズに合わせて食品を選びながら、植物由来の食品を主体とする食事を勧めているという同氏は、「プロバイオティクスのサプリメントを摂取するよりも、まずは食事内容を重視すべきだ」と主張している。
Weersma氏らの報告を受けて、米マサチューセッツ総合病院の消化器専門医であるAndrew Chan氏は、「食事と疾患リスクの関連で腸内細菌叢が重要な因子となっていることを裏付けるエビデンスは増えつつある」と説明。ただし、腸内細菌叢を「臓器」と捉える考え方もあるなど、その影響は炎症だけにとどまらない可能性があることを指摘し、「腸内細菌叢が健康に影響を与える機序や、"健康な"腸内細菌叢の定義を明らかにするために、さらなる研究が必要だ」と付記している。(HealthDay News 2021年4月19日)
https://consumer.healthday.com/4-19-are-you-eating...
腸内細菌叢に有害な食事とは? - HealthDay
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