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Monday, December 6, 2021

飲食店で食物アレルギー表示がなくて困っています - NHK NEWS WEB

飲食店で食物アレルギー表示がなくて困っています
食物アレルギーのある人の多くが抱える思い、それは「普通に外食したい」ということ。

もっと安全に外食できる店が増えたらいいのに。

そのためには料理に何が入っているか表示してほしいのです。

(ネットワーク報道部 山本未果 金澤志江)

外食が怖い

都内に住む看護学生の綾香(仮名)さん(20)。

牛乳やナッツのアレルギーがあります。

小学3年生の時、外食したあと、ショック症状を起こして救急搬送されました。

家族で訪れたホテルで「アレルギー食品は使っていません」と表示されていたランチを食べた直後のことでした。

その後体調は回復しましたが、料理には何らかのアレルギー食品が入っていたのではないかとみています。

綾香さん
「有名なホテルできちんと表示してくれていると思ったので安心して食べていたんです。だからなんで?って。『外食は怖い』と思いました」

加工食品にはアレルギー表示が必要

容器で包装された加工食品については、食物アレルギーの原因となる食材を法律で表示することになっています。

特に発症の頻度が高く症状が重い、えび、かに、小麦、そば、卵、牛乳、落花生(ピーナツ)の特定原材料と呼ばれる7品目については表示が義務づけられています。

また、キウイフルーツやごま、ももなど21品目については表示が推奨されています。

こうした表示は食物アレルギーのある人たちにとっては命に関わる可能性もあり、とても大切な情報です。

飲食店では表示なし 誤食事故も

しかし、レストランなどでの“外食”では法律上、飲食店に食物アレルギーの食品を表示する義務はなく、それぞれの店に対応が任されているのが現状です。

全国の8つの食物アレルギー患者の会が協力して、ことし8月から9月にかけて食物アレルギーの患者を対象にウェブ上でアンケート調査が行われ、1141人が回答しました。
「外食などで誤食事故を経験したことがあるか」たずねたところ、外食では43%(487人)がアレルギーの原因食品を誤って食べた経験があり、そのうち、症状が出て医療機関を受診した人は57%(276人)におよんでいました。

さらに症状が重く入院に至ったケースも15%(72人)と、外食で誤食による危険な事故が相次いでいる実態が明らかになりました。

事故の多くが患者が材料をよく確認していなかったり、店側が誤った説明を行っていたりしたために起こっていたということです。

調査の監修を行った医師で昭和大学医学部小児科学講座の今井孝成教授は「いつ最悪な死亡事例が起きてもおかしくない」と指摘しています。

今井孝成教授
「想定はしていましたがこんなに多いんだと思いましたね。今の若い親御さんたちにとっては外食はごく普通の食生活のひとつです。それが、食物アレルギーがあるというだけで制限させられ、またそこにリスクがあるというのはやはり負担ですし、生活の質の大きな低下につながります。なんとかしなくてはいけないです」

困ったら「アイスティー」

ホテルの食事で怖い思いをした綾香さんは、いつ症状が出るかわからないという警戒心から、外食は何度も通っている決まった店にしか行かなくなりました。

ただ年齢を重ねるにつれ、友人と出かける機会も増え、行ったことのない店を利用せざるをえない場面も出てきました。

周囲にアレルギーがあることをなかなか言い出せませんでした。

友人と約束をした時には、1週間前に、同じ店に母親と出かけ、あらかじめ自分でも食べられるメニューを店員に聞き、実際に試したうえで友人との「本番」に臨んでいます。

時間がなくてそれができない場合に注文するのは必ず「アイスティー」と決まっていました。

綾香さん
「『おなかすいてないから、私、アイスティーでいいや』といつも言っていました。アレルギーがあって人と違うと思われるのがいやだったのと、友達に気をつかわせたくないと思って。でも友達とはやはり一緒にでかけたかったんです」

検討はされたけど…

外食での食物アレルギー表示の問題については2016年に消費者庁で検討が行われました。

しかし…

「同じメニューであっても、店によってはその日の仕入れで、使用される原材料や内容量にばらつきが生じることがある」

「患者によって症状の出方がバラバラで、対応が難しい」

「すべての事業者が調理器具に付着したわずかな成分まで取り除くことをはできない」

こういった声があがり、それぞれ自主的に取り組みを進めていくことが確認されました。

対応できる?できない?

自主的に取り組んでいる店側の対応に患者が困惑するケースも少なくありません。

食物アレルギーのある娘を持つ都内の50代の女性に話を聞きました。

18歳の次女は生卵と2種類のナッツ、それにマンゴーなどにアレルギーがあります。
特にナッツを口にすると強いショック症状が出るため、それを和らげるため注射薬の「エピペン」を常に持ち歩いています。

ことし、緊急事態宣言が解除された後、大学入学のお祝いで都内のレストランを予約しました。

店のホームページには避けてほしい食材を記載する項目があったため、次女も食べられるメニューを提供してもらえるよう伝えました。

しかし、当日出てきたのは卵白を使ったメレンゲが乗ったスープに、焼いたマンゴーを添えた肉料理、そしてナッツを使ったデザート。

フルコース10品のうち3品を食べることができませんでした。

女性
「家族ですごく楽しみにしていたのに悲しい雰囲気になりました。こちらと店側の認識が違うということを思い知らされた感じでしたが『アレルギーの人はお断り』という対応になって、ほかの人たちに迷惑がかかるのもいやなので理由は聞けませんでした」

店側にはアレルギー対応が本当にできるのかどうか、明確にしてほしいと思っています。

女性
「今回は『これは危ないかも』と思い料理が出てきた際に確認しましたが、中途半端な対応は命を危険にさらすことにもなります。メニューの対応ができるのか、できないのかをはっきりさせてほしいです」

料理のどの部分に使われているのか表示する店も

食物アレルギーの人に対応しようと取り組みをしている飲食店もあります。

大手家具メーカーの店内にあるレストランでは、すべてのメニューで、現在27品目のアレルギー表示を行っています。

「アレルギーがある」と客から申し出を受けると、店員が一覧表を示しながら説明しています。

店員
「乳製品やナッツ類について入っているのかどうか質問が多いです。食べられるかどうか判断していただくために、丁寧に説明するよう心がけています」

材料だけでなく、微量でも混入する可能性を考えて、工場の製造ラインを共有しているものについても記載しています。

また、できるかぎり料理の中の何にアレルギーの食材が含まれているのかまで細かく表示する工夫をしています。

そうすることで、食べられない食材が使われているトッピングを抜くなど、要望に応じて対応できるケースもあるといいます。

例えばミートボールのプレート。

添えてあるマッシュポテトとソースに乳製品が含まれています。

牛乳のアレルギーがある場合「マッシュポテトとソースは抜いてもらう」ことで食べられる人もいます。

客から要望があった場合店側も付け合わせをフライドポテトに変更するなどの対応をしています。

食品の安全管理を担当している羽田裕さんは、メニューが変わるたびに細心の注意をはらっているといいます。

イケア・ジャパン 羽田裕さん
「何を抜けば食べられるのか知りたいというお客様の声を受けて始まりました。一覧で表示することで、お客様だけでなく対応する従業員にとっても分かりやすくなります。命にかかわることなので、間違いのない正しい情報を表示するということが大事です。アレルギーのある方にも食事を楽しんでもらいたいです」

ただあくまでも店側は情報を提供する立場で、客側が食べられるかどうか自分で判断してほしいとしています。

「安全のために店では判断ができないので、あくまでもお客様自身に選んでもらっています」

外食でもルール作りを

全国の8つの食物アレルギーの患者会では、11月、消費者庁に対し、外食などでのアレルギー表示について一定のルール作りをするよう求める要望書を提出しました。

途中になっている議論を一歩でも進めて、患者が店を選べる環境を作ってほしいと求めました。

アレルギーを考える母の会 園部まり子代表
「『アレルギーがあるから外食はするな、するなら自己責任で』という意見もありますが、それで外食できないとなると世界が狭くなってしまいます。
自主的に対応してくれている店については非常にありがたいですが、表示をするのであれば、きちんとアレルギー物質が混入しない対策をとったうえで正確な表示をしてほしいです。
また患者の側も店に任せるのではなく、遠慮しないで必ず毎回自分で材料を確認するなど正しい知識をもつべきだと思います。店側も患者側も、同じ方向を向いて取り組みを始めるということだけでも事故の数はずっと減らせるのではないかなと思います。
そして世の中全体がアレルギーがある人もいて普通だと思える社会になってほしいです」

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